癒しのストーリー「不思議なヒッチハイカー」

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不思議なヒッチハイカー

まだ私の父が若かったころ、父は旅行のためある田舎道を車で走っていました。時間はまだ早朝でしたが、父の車の後ろには何台かの車が連なって走っていました。

ある地点に差し掛かったところ、道のわきに、大きなバックパックを背負った男性のヒッチハイカーを見つけました。

父はとても親切な心を持った人だったので、迷いもなくヒッチハイカーの前に車を止め、ヒッチハイカーに乗るよう促しました。その男性は大変フレンドリーな人で、父は彼の家族や仕事について尋ねるなど、その男性との会話を楽しみました。男性があまりにも聞き上手なので、父は「子供がほしいんだ。」という話もしました。

しばらくそのような時間を過ごしていたのですが、突然、その男性は父に車を止めて自分を降ろしてほしいと頼みました。父は、そこが畑のど真ん中で、男性が目的としそうな建物などは一切なかったため、戸惑いました。男性は、父に「心配なさらないで。」と言って、そのまま車を降りて行ってしまいました。

父がまだ混乱していると、車の後部座席にバッグが置きっぱなしになっているのに気が付きました。父は、すぐにバッグを手にして男性を探しましたが、周りは畑しかないというのに、男性の姿は見当たりませんでした。しばらくの間、あたりを歩き回って男性を探しましたが、結局見つけることはできませんでした。父は、どこに行ったのか、どうやって姿を隠すことができたのか、まったくわからなかったと語っています。仕方なく父が車に戻り、男性の忘れ物であるバッグの中を見てみると、バッグの中には何も入っていませんでした。

父は、なんとか気を取り直して車を再度走らせました。しばらく道を走っていると、前のほうで、何台かの車が折り重なるようにして道の真ん中に止まっているのが見えました。それはひどい事故でした。

そして、その事故を起こした車たちは、父がヒッチハイカーを乗せた直前まで、父の車の後ろを走っていた車だということに気が付きました。

父があのヒッチハイカーのために車を止めず、そのまま車を走らせていたら、この事故に巻き込まれていたかもしれないのです。父は、もしかしたらあの男性が私を救ってくれたのかもしれないと直感的に考えたそうです。

そんな出来事があった2週間後、父の妻、いわゆる私の母が妊娠していることが判明し、父は大いに喜んだそうです。

父は、いまだにヒッチハイカーが忘れていったバッグを持っています。そして、いつかまた彼と出会い、お礼を言える日がくることを心待ちにしています。

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